九州から来たマッサージ師は、ヨシさんと言いました。穏やかな風貌に強い光をたたえた目。まるで『STAR WARS』のヨーダみたいな、マスターの目だなと思いました。
わたしの話を聞きながら自然に脈診を始めると、ヨシさんはまず、「君、甘いものが好きでしょう?」と言いました。
そして、「いますぐに止めたほうがいい。白砂糖、それに乳製品もダメ」と続けました。
これまで会った医師には、食事や生活のことを聞く人は誰もいませんでした。
癌は、生活習慣病なのに!です。
この時にはもう白砂糖や乳製品を摂るのは止めていましたが、最初に食事のことを言われて、「ようやく、こういうことを言ってくれる人が現れた」と、本当に頼もしい気持ちでした。
次にヨシさんは、手の平の内側をぎゅっと押して、「ここ、痛いでしょう?腎臓が弱ってる」と言いました。
ずっと気になっていたむくみは、腎臓が弱っているサインだったのかもしれません。
そして、脈を診ながら次々と質問を続け、細かくアドバイスをくれました。
「水分を摂り過ぎだね。水はごくごく飲まないで、お猪口で飲むように、大事に味わって飲むようにして」
「ご飯は、もっとよく噛んで」
まるで、わたしの生活が丸見えになっているみたいで、恥ずかしくなりました。
ヨシさんは、わたしを「毎日夜中にポテトチップスを食べながら、健康になりたいと言っている子どもみたいなもの」だと笑って、「だからこそ、やれることは、いくらでもある」と、きっぱり言いました。
「僕が君なら、明日からすぐに、がらっと生活を変えるね」
そう言われて、自分の考えが甘かったことを知りました。
食事をちょっと変えるぐらいじゃなくって、もっと根本的に生活を変えないとだめなんだ。
中でも、生活のリズムを変えることはチャレンジでした。
23時には寝ること。そして、19時までに食事をすること。
それまでは、夜遅くまで働いて、夜中に帰宅して夜食を食べ、朝方に眠るのが常でした。
一瞬、そこまで変えられるかな?と躊躇しましたが、命がかかっているのだし、出来る限りのことをやるしかありません。
ヨシさんのアドバイスで、体力を優先しながら、断食も取り入れることにしました。
体力を落とさないように、1日だけの断食で、その日は水を飲むだけ。次の日は大根粥から始めて、一日かけて通常食に戻すというものです。
これを、体温が落ちていないことを確認しながら、二週間おきに行うことにしました。
体温を確認するのは、体力、免疫力が落ちていないことを確認するためです。
わたし自身の治癒力と、乳癌の進行、どちらが勝っているかを見る指標として、体温を計ること、それと舌の脇に歯形がつかないようにしていくことを教えてもらいました。免疫が上がって、舌に弾力が出てくれば、歯形は消えていくのだそうです。
断食の効果はてきめんで、溜め込んでいた毒が、排出されはじめたように感じました。
どれを採用すれば良いか、迷っていた食事療法も、わたしに合うように調整してくれました。
いまは、癌に勝つ体力をつけることを優先して、野菜は豆などのタンパク質と一緒に摂るようにと言われました。野菜だけだとデトックスになり、栄養を吸収するためには、タンパク質や炭水化物と一緒に摂る必要があるのだそうです。
食事療法は、玄米菜食を基本とするものが多いのですが、わたしには玄米が強すぎるようで、時々お腹を壊してしまうのが気がかりでした。それを伝えると、「君にはキレート作用が強過ぎるから、いまはまだ、無理に食べなくていい」と言って、主食じゃなくておかずとして少量を食べれば良いとアドバイスをくれました。
そして、癌でよく処方される漢方薬は、白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)だということ、霊芝の品質の良いものと人参も、免疫を上げていくために良いと教えてくれました。
気功、太極拳、瞑想、ヨガなどから、持続できることをやること。
ラジウム石をお風呂に入る1〜2時間前に入れておくこと。
絶対ダメなのは、満腹で寝ること、夜更かし、ストレス。
とにかく、いまは体温を上げること。体力を付け、循環する身体にしていくこと。
これから何をやればいいか、地図がどんどん書かれていくような感じでした。
ヨシさんは最後に、
「これだけのことをやれば、三週間から一ヶ月で確実に良くなる。もしも良くならない時は、やり方が間違ってる」
と言って、その時はすぐにやり方を見直すように念を押しました。
まず一ヶ月やってみる。そして、その結果を見て、先のことを決める。
それなら、迷うことなくトライできそうでした。
神のサポートは、人を通してもたらされると言います。
病院で漢方薬を処方してもらえず、「ちょっと神さま、天使、なんとかしてよ!」と怒り気味につぶやいた時には想像もできなかった出来事が、この夜、起こりました。
わたしが放った願いに対する答えが、完璧なかたちで与えられたことに、わたしは興奮していました。
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