筋肉が持っていた悲しみの記憶

ママ先生に、まるで酷い肩こりのような乳癌の上部分をほぐしてもらっている時のこと。

まさに肩こりを揉んでもらっている時のような、痛気持ちいい感じがあって、その後に、肩から背中の中心あたりが凝って痛い感じがありました。

先生にそれを伝えると「そっちのコリが原因でこれが出来たのかもしれないですね」と言って、特に背中には何もしないのでした。

家でその話を彼にすると、「じゃあ、背中は俺が」と言って丁寧にマッサージをしてくれて、なんとその一度でコリはすっかりほぐれてしまいました。

そして、その次のママ先生の診察日。「今日は首も肩も凝ってないですね」と最初に確認をしていたのに、先生が同じ場所をほぐしていると、今度は肩から背中の前回より少し外側が痛みます。

しばらくすると突然涙がポロっとこぼれました。

その一瞬に、思い出したのは、うさぎのランドセル。小学校に上がる直前、母と祖母と一緒に出掛けてうさぎのマークの赤いランドセルを買ってもらったその日、父が失踪しました。その日家に帰ったら父が居ないこと、そして二度と戻らないことを、わたしだけが知っていました。まだ5歳か6歳の子どもには、重すぎる秘密でした。

先生は驚いて「痛いですか?」と背中を確認してくれたのですが、なんともなさそうでした。

やはり背中と肩が凝って痛く感じるのだと伝えて「先生、これは筋肉の記憶ですか?」と聞くと、たぶんそうだろうということでした。

驚いたことに、筋肉はそのコリをつくった時の体の痛みと一緒に、感情までも記憶していました。当時は、何も知らないことになっていたわたしは、泣くことも出来なかった。こぼれ落ちたのは、こらえた分の涙だったのかもしれません。

その日の夜、わたしが言う前に、彼がまさに背中の痛かった場所をマッサージしはじめたので、そのままに任せていると、痛かった背中と肩はすっかりほぐれてしまいました。

しこりを解しながら、古い痛みを一緒に解放していく。これが治療のプロセスなのかなぁと思った出来事でした。

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